ツルの伸び方でわかる働き方の流儀
カボチャは、種から蒔いた。さつまいもは、苗を買ってきた。
スタート地点からして、もう違う。
一方は土に種を落とすところから始まる正真正銘の「生え抜き」。もう一方は、よそで育ててもらった苗を連れてくる「中途採用組」。
なのに、畑に並べば同じように地面を這うツル植物。
「お前たち、本当に親戚か?」
そう聞きたくなるほど、ここから先の生き方がまったく違う。
カボチャとさつまいも。どちらも地面を這うツル植物。だが夏の畑を歩くと、まるで別の生き物を育てているような気になる。
まずカボチャ。まるで『拡大路線の企業』のような性格だ。
朝、畑に行くと、昨日よりツルが伸びている。「おはよう」と声をかける間もなく、もう隣の畝まで進出している。節という節から根を下ろし、「本社移転しました」「新支店オープンしました」と、節から根を下ろし、どんどん新しい“支店”を増やしていく。
止める術はない。というより、止めてはいけない。
カボチャの世界では、伸びること=稼ぐことだ。ツルが長くなればなるほど、葉が増え、光合成が進み、実が育つ。まさに「攻めの経営」。農家は黙って見守るしかない。むしろ「その調子だ、もっと行け」と応援団になる。
一方のさつまいも。こちらは方向性がまるで違う。
こいつも負けじとツルを伸ばすのだが、目的地が謎だ。「あっちに畝の隙間がある」「こっちに日当たりの良さそうな場所がある」と、まるで散歩感覚でふらふら広がっていく。葉はワサワサ茂り、見た目だけは元気いっぱい。
だが、この「元気」が曲者なのだ。
さつまいもは、ツルの節から根を出す癖がある。地面に根を張ってしまうと、そこにも栄養が流れ始める。すると本来イモに集まるはずの養分が、あちこちに分散してしまう。
つまり、地上で寄り道すればするほど、本業のイモづくりが細ってしまう。まるで副業に手を出しすぎて本業の売上が落ちる人みたいな話である。
だから農家は、このツルを容赦なく引っぺがす。
「ツル返し」という、いわば強制送還作業だ。
伸びた先で根を下ろそうとしていたツルを、えいやっと持ち上げて向きを変える。さつまいも本人にしてみれば、
「せっかく良い場所を見つけたのに!」
と抗議したいところだろう。だが農家は容赦しない。「お前の仕事は地下だ、地上で油を売るな」と。
面白いのは、この正反対の性格が、そのまま秋の収穫に直結することだ。
カボチャは、地上でのツルの活躍がそのまま実の大きさに比例する。伸びた分だけ、稼いだ分だけ、実る。わかりやすい成果主義。
さつまいもは逆で、地上のツルを抑え込めば抑え込むほど、地下でどっしり太る。地味な我慢が、秋にゴロゴロとしたイモになって返ってくる。
同じ「ツルを伸ばす」という行為なのに、片方は褒められ、片方は叱られる。こんな理不尽な話があるだろうか。
だが考えてみれば、人間社会も似たようなものかもしれない。
前へ前へと突き進んで結果を出すタイプもいれば、余計な動きを抑えて、じっくり地力を蓄えるタイプもいる。
佐藤農園の畑は、性格の違う社員をうまく活かす名経営者のようだ。どちらも秋には、堂々とした姿で収穫の時を迎える。