畑には毎年、小さなドラマがある。主人公はキャベツ……ではなく、青虫くんだ。
彼らは新鮮な葉っぱを見つける天才で、どうやら私の畑を「高級レストラン」だと思いこんでいる。
自家用なら、多少の虫食いは「無消毒の勲章」と笑って済ませられる。ところが販売用となると話は別だ。
直売所で手にした瞬間、青虫くんが「こんにちは」と顔を出したら、それはもうホラー映画。農家は「新鮮さの証」と「絶対に混入させてはいけない現実」の間で、毎年頭を抱える。
私のような小さな農家は、苗の頃から防虫ネットでぐるりと囲み、モンシロチョウの侵入を全力で阻止しようと悪戦苦闘。
相手も強者。忍者のようにわずかな隙間から入り込み、卵を産み、青虫となってキャベツをムシャムシャ。気づけば私は、畑でチョウチョを追い払い、青虫を追いかけ回す毎日。農家なのか、昆虫採集少年なのか、自分でも分からなくなる。
一方、よその広大なキャベツ畑では、モンシロチョウの姿一匹見当たらない。まるで「虫立入禁止」のテーマパークである。
それでも私は、毎年のこと、ほんの2ヶ月だけ、完全無消毒キャベツにこだわっている。1個100円にこだわっている。だから、この期間だけは、自然と青虫くんとの真剣勝負となる。
そして2ヶ月が終わると……はい、私は普通に直売所でキャベツを買います。なぜなら、私はキャベツが大好きだから。
理想も大事。でも食欲には勝てない。
農家だって、結局はそんな普通の人間なのである。